東京心中。
みな、それぞれ思いつくままに、勝手なことをしゃべりながら歩いた。神さまと仏さまの力で、すべてのテレビ局の画像と音声とが、全部ひとつに重なったら、こんなことになるのではないかと思われる情景だった。
タワーのエレベーターは、四人を一二五メートルの展望台まで運びあげた。
夕ぐれの地上に、街が限りなく広がっている。
「これだけの家があり、これだけの人がいるんだから、よほど意外なことが起こったとしても、そうおかしくは……」
と、四人のうちのだれかがつぶやいた。するとだれかが応じた。
「その、気まぐれ指数とかが、一致して高まればね。こんど高まるとしたらば、どのへんで……」
だれかが、ある方角を指さして言った。
「きっと、あのあたりかも……」
「恋をする男の例にもれず、かれは気に入られることを願った。そして気に入られることが不可能かもしれぬという、にがい不安を感じた。かれはその服装に、若々しく晴れやかに見せるいろんな細目をつけ加えた。宝石を身につけたり、香水を使ったり、日になんども化粧のために、長い時間をかけたりして、装飾し興奮し緊張しながら、食卓にあらわれた。自分を魅了しているあの甘美な年少者に直面すると、かれは自分の老いかけた肉体がいやでたまらなかった。自分の白い髪、とがった顔つきをながめると、はじらいと絶望におちいるのであった。肉体的に自分を活気づけ、再生させようという衝動がかれをかり立てた。かれはしばしばホテルの理髪師をおとずれたのである。」




